
Notice
2026年 健保の展望
ー急務となる現役世代の負担軽減ー
将来を見据えた社会保障制度実現へ
全世代が支え合う新制度に期待
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監修●国際医療福祉大学名誉教授 水巻 中正
※掲載内容については、2025年10月17日現在の情報に基づき構成しています。
高齢化で膨らむ健保組合の負担
財政難の健保組合は約半数に
日本は「超高齢社会」であり、かつ「少子社会」という状況にあり、この状況は年々深刻化しています。総人口は減少を続けるなか、高齢者の比率は2040年に人口の35%まで拡大すると推計されています。一方で、現役世代やその先の将来世代は減少が続いているため、社会保障の支え手が減り、支えられる人が増えるという健康保険組合にとって危機的な状況に陥っています。
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健康保険組合連合会が発表した「健康保険組合 決算(見込み) 集計結果(概要)―6年度決算見込みと今後の財政見通しについて―」によると、令和6年度の被保険者数は約1,693万人、保険料収入は前年度比4.9%増の9兆1,444億円となりました。経常収支差引額は145億円の黒字となりましたが、全体の約半数にあたる660組合が依然として赤字の状況です。高齢者の比率が大きくなっていくことで、高齢者等拠出金の負担が今後ますます組合の財政を圧迫していくことは明らかです。
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こうしたなかで政府が発表した「経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針2025)」では、前年に続き全世代型社会保障の構築が掲げられています。現役世代を含む国民の負担軽減のため、医療DXを通じた効率的で質の高い医療の実現、生活習慣病の重症化予防などの実現に向けて検討されています。昨年12月に健康保険証が役割を終えマイナ保険証に一本化されましたが、1人ひとりの健康情報を活用できるマイナ保険証の強みを生かすことで、全世代型社会保障の実現が近づくとの期待が寄せられています。
子ども・子育て支援金制度は
将来世代を守る施策となるか
また、少子化対策においては新たな施策が打ち出されました。
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厚生労働省が発表した人口動態統計によると、令和6年の出生数は過去最少の68万6,173人となり、平成28年以降9年連続で減少を続けています。このような危機的な少子化の対策として、「子ども・子育て支援金制度」が4月から開始されます。これは健康保険料や介護保険料と併せて徴収される支援金で、妊娠・出産時の支援給付、児童手当の拡充、出生後休業支援給付など社会全体で子どもと子育てを支援する事業の財源に充てられます。高齢者も含め全世代が支え手となる制度ですが、年々深刻化する少子化問題を解決するきっかけとなるか、動向に注目したいと思います。









