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寒くなると危険が増える…
覚えておこう、冬の「血圧」のこと

最悪の場合、脳梗塞や心筋梗塞など命にかかわることもある「高血圧」。その原因は遺伝や塩分のとりすぎ、喫煙などさまざまですが、はっきりした自覚症状に乏しいのが「サイレントキラー」と呼ばれる理由です。
寒くなると、血圧が上がりやすくなる要因が増えます。環境により、絶えず変動しているのが血圧です。「自分は大丈夫」と油断せずに、血圧が上がりやすい季節であることを覚えておき、安全に過ごしましょう。

その他、〝冬〟にはこんな要因も…

  • 冬は口内の乾燥から味覚感度が下がり、濃い味を求めがちです。

  • 汗をかく習慣がないと、体内に余分な塩分をためこみやすくなります。また、肥満も高血圧のリスク要因になります。

  • 少量のアルコールは血圧を下げますが、飲みすぎると血圧を上げてしまいます。おつまみは塩分が多いことにも注意が必要です。

  • 42℃以上の熱いお風呂は血管を収縮させ、血圧を上げてしまいます。

自覚症状はないのに…
血圧が高くなるとなぜ危険?

血圧が高いということは、血管の壁にかかる血液の圧力が高いということです。健康な血管には柔軟性がありますが、血管に圧力がかかり続けると柔軟性を失い、硬く、もろくなっていきます。これが動脈硬化で、ある日突然、詰まったり破裂したりすることがあり、命にかかわる危険な状態です。ゴムホースを想像してほしいのですが、硬化した部分に高い水圧がかかり続けると、やがて耐え切れずに破裂してしまうことに似ています。
このような血管の変化が起きているにもかかわらず、目立った自覚症状がないのが高血圧の怖いところです。血圧が高くなると、頭痛やめまい、肩こりなどを訴えることがありますが、血圧とは関係なく起きるありふれた症状のため、高血圧が原因だと疑うのは難しいでしょう。現実的には自覚症状に頼らず、健診結果で自分の血圧を把握しておくことが重要です。

健診結果はどうでしたか? 注意したい血圧の数値

【収縮期血圧(最高血圧)】
130(140)mmHg以上
いわゆる「上」の血圧です。心臓が収縮して血液を送り出した際のもっとも血管に圧力がかかっている状態の数値です。

【拡張期血圧(最低血圧)】
85(90)mmHg以上
いわゆる「下」の血圧です。心臓が収縮した後、拡張した際のもっとも血管に圧力がかかっていない状態の数値です。

※( )内の数値は受診勧奨判定値です。この数値以上になったら、医療機関を受診しましょう。

 

血圧の「上」と「下」、どっちが重要?

大きな圧力がかかっている「上」の血圧のほうを気にしがちですが、「下」が高い場合でも高血圧と判定されます。「上」も「下」も重要と覚えておきましょう。
なお、「下」が低ければ低いほどよいかというとそうでもありません。「上」と「下」の差のことを「脈圧」といいますが、正常値は40~60の間です。これより大きくなっても、小さくなっても動脈硬化が進んでいる可能性があります。

危険を減らす!
寒い季節の血圧管理

若い人でも、食事後や飲酒後にお風呂に入ると、ヒートショックが起こることがあります。また、塩分をとりすぎると、体内の塩分濃度のバランスをとるため血液中の水分量が増え、血圧が上がります。ヒートショックを防ぐため温度差を減らすこと、血圧を上げないために塩分をとりすぎないことが冬の血圧管理の基本です。少しでも危険を減らすために、意識しておきましょう。

● 温度を管理 ●

  • 入浴時は、脱衣所や浴室を暖めておくことに加え、熱すぎるお湯に浸かることは避けましょう。ぬるめのお湯にゆっくり浸かれば、副交感神経が刺激されてストレスも軽減できるため一石二鳥です。

  • また、意外に危険なのが起床時に布団から出るときです。冬の朝方、寝室の室温はかなり低くなっています。タイマーでエアコンを設定しておくなど、布団の中と室内の温度差を少なくしておきましょう。

  • WHO(世界保健機関)は血圧の上昇などを防ぐため、冬の室温を最低でも18℃以上にすることをすすめていますが、日本の住宅の多くがこれを下回っています。光熱費の節約にもつながりますので、二重窓などの断熱リフォームもご検討ください。

● 塩分を管理 ●

  • 温かい汁物がほしくなる季節ですが、汁物には塩分が多く含まれています。汁はなるべく残すようにしましょう。また、宴会が多くなる季節のため、飲みすぎ・食べすぎにも注意しましょう。

  • 冬でも体を動かして、汗をかくことも重要です。外は寒いので、フロア移動など屋内で汗をかくことのできるチャンスを逃さないようにしましょう。

たまたま健診で低いことも…
健診以外でも、血圧を測っておくと安心です

健診では血圧が正常なのに、実際は健診以外のタイミングで高血圧になっている人がいます。このような状態を「仮面高血圧」といい、頼みの綱の健診で見過ごされてしまうため、適切な治療や生活習慣改善につながらずに高血圧を悪化させてしまうおそれがあります。
仮面高血圧のリスクが高いのは、血圧がやや高めの人、喫煙者、お酒をよく飲む人、ストレスが多い人、肥満の人などです。血圧は1日のうちでも20~30mmHg程度は変動するため、チャンスがあればさまざまなタイミングで測っておくと安心です。


監修:さいとう内科・循環器クリニック 院長 齋藤 幹

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